いのち満ちるということ

OLYMPUS DIGITAL CAMERAIMG_3180
2017/10/10

湖の岸辺の少し湿ったところにいた草
小さな星のような形をしていて
よく見れば細い茎は
撚り糸みたいにねじれている
ねじれたまま
ねじれた同士が心地よさそうに寄り添っている

そんな小さな草と向き合う朝のスケッチ

先日大切な方のお別れのご挨拶にやっと伺うことができた

20年近く前、神保町のその方の編集プロダクションを訪ねたことが最初の出会いでした
描きためたイラストの作品ファイルを抱えてすこぶる緊張していた私
どこの誰とも知らない弱々しい人の絵を
目を細めて笑みを浮かべてゆっくりひとつずつ見てくださったこと
そして、その数ヶ月後に小さな植物のイラストカットの仕事をくださったこと
当時ハーブの雑誌に童話の連載のしかしていなかったからそれがイラストレーターとして初めて仕事になった
そんな遥か昔の記憶が次々浮かんできた
仕事においてもプライベートでもいろんなご縁があって引退された後は八ヶ岳でご近所さんになったり
カメラ片手に散歩しながらいつもの目を細めた笑顔で立ち寄ってくださったり
私の展覧会にはいつも欠かさず、絵を描き続ける姿を見守ってくださったように思う。

”ここ数年私はいのちと向き合うようにして過ごしてまいりました。この場合のいのちはわたし一個の
いのちというより もっと大きなものもっと深い
ものにつながる万物のいのちというようなもので
あったと感じます。
……….
この間 わたしのなかをいくつもの季節がめぐって
いきました。これらの季節の細片のひとつひとつが
つながり歳月をつくりわたしという人間をつくりだ
してきました。それはいのちの連祷 更に言えば天
への郷愁のようなものをわたし自身の中で育んでい
ったように感じます。
この細片のひとつひとつには また重ねるように人
との「響きあい」があったことも忘れられません。
……
そこには必ず人との胸おどる出会いがあり、ひとり
ひとりとの感動の分かち合いがあったと思いかえさ
れます。
…..
命尽きて いのち満ちるということもあると信じて
よいでしょう
わたしは天に還ります ありがとう さようなら”

八ヶ岳での暮らしを綴ったブログが本にまとまる予定なのよ
と奥様が教えてくれた
彼の綴ることば、本という形で読めること心待ちにしています。

杜鵑草の精巧な美しさは
世界の仕組みを心得てるよう
ワイン色の斑点をひとつひとつ筆で追いながら
この季節の細片とつながるじかん
からだのなかを季節がめぐっていくこと
いのち満ちるということ

IMG_3196

 

 


 

Posted in 空詩土にっき
カテゴリー