旅に出る前の日

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OLYMPUS DIGITAL CAMERA 2019/8/18

10日ぶりにBornholmに戻るフェリーのにいます
ザザ振りの雨、雨上がりの明日にまだ夏は残っているかしら

コペンハーゲン、スウェーデン、ダーラナと旅をしてきました

その旅に出るちょうど前の日のことバス停で黄色い花など眺めていた日、思いがけなくバスの中でJohnに会ったのでした。
いつもの通り白いシャツと生成りの短めキュロット、たっぷりとした真っ白な長髪と白いひげとが繋がってて、日に焼けた身体につけてる衣も髪もヒゲはみんな真っ白、だけどきっと結構若いのだ。とにかくバスに乗ってきたらパッと目を惹く彼なのでした。

思い出せば最初に出会ったのはもう5年前のこと。
毎年展示してるギャラリーにふらりと彼女と一緒に現れて、結構長くお喋りするのだけれど、ちょっとほろ酔いだったり饒舌だったり、捉えどころがなくて謎が多かった。おまけにその次はまた一年後に、という繰り返しだったから。それでも次第に彼のお父さんが木の関係のお仕事だったこと、日本の工芸に詳しかったこと、彼は映像作家らしいこと、彼女はコペンハーゲンやドイツやあちこちでギャラリーの企画などをしてるらしいこと、そんなことが数十分の会話が5回(5年)重なってようやく少しずつわかってきたような、そんな関係だった。

そうして今年はなぜだかいろんなところでばったり会った。道端でバス停でもちろんギャラリーに見に来てくれたし、その後もあちこちで、隣町でばったり会った。そうして旅に出る前の日にやっと初めて彼らの夏の家を訪れることになったのでした。

夏の家はすごく素朴だった。昔は小さな食堂だったというとこじんまりしたかなり古い家、青い窓枠、白い壁、梁は海側に傾いていて、正面の黒い扉はバラの蔓で上から下まで覆われていた。こっちこっちと庭から手招きしてくれる。

裏庭が思いの外広く、段々畑みたいに斜面が3段に別れていて、一番上まで上がると海が望めた。

この日もバスの時間まで1時間もなかったのだけれど
何が一番心に残ったのかというと、、、、
彼らのいろんなアートコレクションや素朴な暮らしぶりやスキューバーダイビングとカヤックもかなりの腕前なことや、もう一つ隣町に家があること、、、ではなくて、それよりも
小さな庭に立って彼の話したことだった
「ここね、前の持ち主から受け渡された時は荒れ果ててたんだ、でも何もここから持ち出さずに何も加えずにここにあるものを生きかえらそうと思ってね、それをコツコツね、馬鹿みたいにやってる」
「あーこのラベンダーはね、嘘、僕が植えた。でも元はみんな、ここにもともとあったこのラベンダーの子供ね」

「この石垣の小石、全部僕が積んだんだ。それも冬の真夜中にね。真っ暗闇だよ、そうすると石の形を目じゃなくて手触りと重さの感覚で感じられるんだ。それが目で判断するよりずーっと早くなってきて、そりゃおもしろい体験だぜ」
一番下の段は昔からの石畳になっていた
そこに小さな3cmくらいの素焼きの植木鉢が並んでた。
ちいさなちさなラベンダーの苗だった。よおく見たら石畳の隙間からラベンダーのこぼれ種があちこちに飛んでいて、「ほら、これもこれも」とまぁ小さな双葉を太い指で指差してくれる

なんだかそのことがすごく印象に残ったのでした。驚いたわけでなくて、あーやっぱり何かそういう人なんだなぁと。
もう一回くらいばったり会えるかな。

旅に出る前の日の話がこんなに長くなりましたが、、、、
振り返って夏の終わりのスウェーデンへの旅について綴ります

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