JOHN OLSENに教わったこと

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ボンホルムを出発するまであと数日になっていたから
できるかぎり 会いたい人に会うことにしていた
RigmorLisbeth のところへ
ボンホルムの南端に位置する美しい海辺の近くに彼女のサマーハウスがあった
彼女は版画工房TRYK2を立ち上げたひと、 
ボンホルムのホイスコーレでも長くartの先生をしていて
必ず毎夏展示を見にきてくれた。
小さな身体 水を映したような潤んで輝く瞳、に見つめられるとみんながつられて笑顔になる
若者を受け止めて いつも何かを照らし返してくれるそんなひと

同じようにもうすぐボンホルムを出発する友人たちも集まって賑やかな夕べに
小さな身体を車椅子に乗せて、くるくるとキッチンを動き
野菜の溢れるキッチンからあれこれを選んで
彼女はさささっと料理を作る、
スパイスは必ず生姜とグルカマイ ジャスミンライスを合わせてエスニックな香りのチキンの煮込み料理ができた
庭の完熟トマトたっぷり、ビーツも入ったグリーンサラダと、
もう庭で食べるには寒いわね、、、と キャンドルの灯りで食卓を囲んだ

バスに合わせて帰る友人たちを見送って 私は一晩泊らせてもらうことになった
このあいだの話の続きがしたかった

ベッドルームはギャラリーのようだった 様々な白黒の版画たち
彼女がいつも言葉の端々で伝えてくれる表現の幅、生き方の幅をそのまま表してるような壁

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次の朝、まずは食べ物の話になった
この夏いろんな友人のところに滞在して、
それぞれの、彼女の、彼のその人らしい毎朝の朝食が楽しみになったと、そんな話をしたからだったかな、
彼女の朝食はスムージー、ケールとセロリと生姜とバナナとskyr(アイスランド発祥のヨーグルトみたいな)
寒くなったら Grød (オートミールを煮たポリッジ)よ。シナモンと夏にとっておいたベリーとナッツと一緒にね
”ボンホルムアーティストの朝食、ていう本ができそうね”
彼女が学生の頃アカデミーで学んでいた時から、ずっと興味を持っていたのが
自然から採れる摘み草(ハーブや野草)素材を大切にする料理だったこと、
今でこそ 地元の野菜や野から採れるもの、オーガニックに皆が関心を寄せて世界中でトレンディになっているけれど
まだその当時40年前でそういう料理のスタイルはほとんど公になかったとか
「それでニューヨークの学校に行ったのよ。」

それからデンマークの画家John olsenの話になった
先日訃報が届いたばかりだった

アカデミーで学んでいた頃、表現することに情熱を捧げる周りの生徒たちと、
アーティストとしての方向性に何かしらのギャップを感じていたこと
自分がどういうスタンスでアートに関わっていくのか、根本的なところで悩んでいたこと
身体のハンディキャップをもちろん抱えながら。。先生の仕事に就くなんてこと、まだ考えもしてなかった頃のことね、

その頃に出会ったのがアカデミーに先生としてきていたJohn olsenだったこと
彼のメッセージはなぜだか強烈だったの
その頃彼女が制作していた作品を見せた時のことを思い出しながら話してくれた
もっともっと、中に入り込め、
もっと、もっと。
君のその歩き方で(彼女は小さな身体でゆっくりと少し引きずって歩く、)君だけの速度で 世界を見ているんだから
その世界に入り込め、って。
僕はこうやって(どんどん、と)地を鳴らすように
君はもっとこの 、地面に近い世界をゆっくり 松葉杖のせいで宙に浮くように歩いているだろうって。

それはどう、ものを描くか、だけでなくてもっと奥の奥の方へ届くようなメッセージだったこと。
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もう一つ、は
彼の授業のエピソード
ある朝 肩に野うさぎを担いで教室に来たの
どさっと大きな机の上に 荷を降ろす
さぁ 描け。
それからそのウサギの皮を剥いで そのウサギのさっきまで血の通ってた身体の中をあらわにして
さぁ 描け
それから肉をさばいて
ささっっと調理室で彼が料理をしたの、それを最後にみんなでちゃんと味わったの
それがね、全部のプロセスなのだって。
彼にとって描くことは命の 外側と内側を 外観と魂を 自在に行き交うの
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そんな話が続いて、彼女がボンホルムでアートの先生になるきっかけになったのは一本の電話だったこと、
まぁやってみようと思って来てみたら、ここにこんなに住みついちゃったこと。
教えるということが、ようやく彼女が掴んだ自分が外と、人と繋がる最適な術だったこと。

もう一つ山があって涙ぐんだりしながら
a lesson of the life そんなここに残る朝になった
車を、まずは新しく探さなくちゃいけないの、車椅子を積んで一人でもどこでも行けるように
大きな大きな車で大変だけど、必要なの。そう言って笑う彼女にまた力をもらう。
翌日彼女から送られて来たのは
John Olsenのリンクだった

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