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デンマーク便り 最終章

Tverstedでの最後の日々は JAPAN i Tversted
今年は町を挙げて、様々なイベントが企画されていたのでした。
デンマークの作家の展示、テーブルセッティング、日本食の会、茶道、、、、数々のワークショップ。
日本から17人の工芸家の方々も到着して 2日間のイベントが行われました

その中の一つのプログラムが日本から摘み草料理家の美朝さんを迎えて ”特別な日本食の会”
日本食材(主に調味料)を使いながら、できる限り現地の森で、山で 海で採れる食材をとりいれるという
かなり挑戦的なイベント。私はそちらのサポートに携わることになっていて
それはそれは濃密な最後の週末になったのでした。

デンマークでは昨今、spise vild (Eat wild)というコンセプトが注目されていて
NOMAをはじめボンホルムのkadaux、など著名なレストランの多くが野生の食材を意識して料理に取り入れている
そんなトレンドは別として、自然豊かなここtverstedでは(八ヶ岳のそれと全く同じように)
季節ごとに野のものを収穫し味わう楽しみを暮らしに取り入れている人々が少なからずいて
ベリー摘みやキノコ採り、などなど、、
そんな野生の食材を使う料理のエキスパート、地元Binslevに住む女性Brittに出会えたことが
何より幸せなことでした
なんどもメールでやり取りはして来ていたBrittと会うのも初めてのこと。
¨12時に迎えに行くから”と 日本からやってきた摘み草料理人を森へ連れ出してくれたのでした。
天使みたいな笑顔のBrittの横には見上げるほどの背丈の若い男性Mikkel、三人でもりへでかけていきました。
(私はお留守番、その間に地元の小学校の生徒たちに折り紙を教える、と言う即興ワークショップがあったりして、
それはちょうど甥っ子たちと同じ年代の目のキラキラしてる子供たち、それもまた楽しかったなぁ。)

夕方になって帰ってきた美朝さんは上気していて静かなまま興奮していた
抱えきれないほどの収穫物たち、。。。それを見ればなるほど、、と納得がいくのでした。
長身の青年Mikkelもまだ森をあるく動物みたいに目を光らせたまま
採ってきたキノコについて、息つく間もないほどの早口で色々とレクチャーをしてくれる。
¨みんな一言でkanterellerって大喜びしてるけど
kanterellerといっても3種類あるんだよ、ほら、この傘の裏がスパイクみたいにトゲトゲしてるだろ、
これがスパイクカンタレッラ”
”これがblack Trumpetだぜ
世界でも3本の指に入るくらいの味って言われてるんだ。知る人ぞ知る、ってやつ”
”これはガーリックキノコ。løg svampe名前の通りニンニクの香り、ほら!”
彼はこうやって野に入ってキノコを収穫し、AalborgのグルメレストランTabuuのキッチンに卸していると言うのだから
本当にプロフェッショナル、なのだ。
とにかく紙に書いて,,,とお願いして、忘れないうちにキノコを並べて名前を添える。

”じゃ!頑張って”どんな風に料理するのか楽しみだといいながら去っていく彼。

机の上にはキノコ、海辺の草いろいろ、塩味のする草、見たこともないくらい大粒のHawtorn 、海藻
キッチンはその日から森の匂いに包まれて、、、、。
これは彼女がデンマークに到着して2日目の出来事なのでした。

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その夜からはこの野生の食材たちと向き合う日々、朝から晩までhyben(ハマナス)の種を出す
Hawtornを枝から実を摘み取り 朝になればアザミを掘りに出かけ、根っこを洗う
”ブナの実をこんなにたくさん使えるなんて、夢みたい、、、”
初めて味わうこの地の食材をどう調理してあげたらいいのか、せっせと手を動かしながら
静かに向き合い耳をすませてる彼女。試作を重ね、二人で試食をする夜。
”塩につけてみたの、ほら、こんなに匂いが引き立ってくる” ”ちょっと染めてみたんだ” と
どう料理をするか、だけでなく
その植物のことを見つめてもっと知りたいと言う気持ちが溢れている彼女。その真摯な姿に感動する私
植物と親しくなる、そのプロセスは描くときと一緒なのかもしれないな、と。
彼女は五感すべてを総動員して、向き合っていた

イベントの日を明日に控えた金曜日、Brittが娘さんを連れて手伝いに来てくれる
”彼女はお料理大好きなの、ヘーゼルナッツの殻剥きは大得意よ、ね”と

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ハマナスの蕾の香り、もみの木の新芽、三つ葉と同じ味のする草
小さな発見と試作を重ねに重ねて、迎えた当日、こんなお弁当風の木箱に、、、、。

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会がはじまって見れば、写真を撮る暇もなく、あたふた駆け抜けた午後でした。鰹節をすってだし汁をとるレクチャーや調味料の試食から始まって
箱につめたお弁当には竹筒、貝のお皿、と懐石風に8品、塩麹に漬け込んだ鮭をぶどうの葉で包んだものは”森からの手紙”と名付けて
書いてしまえばなんともシンプルな献立だけれど
森を歩くことから始まった長い長いjourney,,,,彼女が森から連れて来たものと向き合ったその時間をも、皆で味合う、ような、
そしてそれは一瞬で消えてしまうのだけれど、
それだからこそ、の特別な会になったのでした。

vild はデンマーク語で ”wild 野生の” と言う意味。
Jeg er vild med,,,,,,,と書いて 「私は〜に夢中である」の意味になる。面白いなぁ
野生は人を夢中にさせる力を持っている、そう実感した日々でもあったのでした。
 

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