冬至の頃

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2022/12/22

冬至の前の数日はぐんと冷え込んで
あ、畑に植えたままにしていた小さな大根たちが
凍った土から抜きたいのに抜け出せない
不意に真冬が大きな姿でたちあわられた、そんな日々でした

冬支度に追われていた合間の1日、日帰りで思い切って東京へ出かけてきました
久しぶりにギャラリーをいくつか巡った中で
足立涼子さんの作品を見れたこととても良かったなぁと思い出しています

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小枝や蔓の片のシルエットを和紙に配置した作品”鳥の言葉”にまず惹かれ
2階に上がると結晶の形を文字のよう配置した作品が並んでいて
『雪の結晶は、天から送られた手紙である、ということができる」中谷宇吉郎の
(結晶の形が上空の気象状況によっていかに変化するかを丹念に研究した科学者)
その言葉から連想され生まれたという作品が机の上に広げられていた

”結晶は硫酸を使って自分で作っているんです”
いつの間にか会場に来ていた足立さんがそう説明してくれる
立ち現れた硫酸結晶の姿をとらえた白黒の大きな写真
そこから結晶の形を選びとり、ひとつひとつまた新たに配置していく
結晶が言葉になっていく
彼女の思考とイメージ、表現に至るまでの過程が純粋にそこに広がっていて
こちらにひとつひとつ丁寧に伝わってくる
黒い紙に銀色のインクでプリントされた結晶の言葉の形は
象形文字のようにも見えた

”自然がもし言葉を発するなら、私たちは今何を受け取るのでしょうか
生物・無生物の境界を超えた
地球上の多様な存在について その存在たちの放つ言葉について”
命を持ったひとりとして ある自然現象を真摯に見つめ
そこから受信した言葉を 純粋に抽出している

その彼女の姿勢に心から共感して帰ってきました

植物を見つめて、描くとき
わたしも無数の言葉を受け取っている、のだと思う
見つめる、そして何かを感じる
その意味を丁寧に掬いとって、見えない言葉として自分の内に積み上げていく
もう言葉になってしまったものを理解するのではなく
自然のそのままの現象を見つめたときに
本質的な言葉は生まれてくるのだと信じたい

”私はそれまで本を読んで物事を理解しようとしてきた
つまり言葉によって理解しようとしてきたのである。
しかし世界はそうでない認識の仕方があることがわかった
本質が形に現れるということがあり、事物に即した確かな認識がある”
半田こずえ「事物に即した言葉』

冬至の日は思いがけず寒さが和らいだ
凍りついていた土がフワッと緩んで
ちいさな大根たちを 救い出すことができた
上の部分は沁みてしまったけれど、風呂吹き大根にするには十分に美味しいはず

 

 

 

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