October

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2022/10/31

10月の一番美しい夕そらは 真冬のように冷え込んだ日のことでした
どこか高い山の頂きから見ているような
荘厳な景色 移りゆく色
この美しさは寒さが授けてくれたのだとしたら、
白い息を吐きながら見上げていました。

薪ストーブをつける季節がこんなに早く訪れるとは!と驚いてみたものの
思い返してみれば10月20日を過ぎれば、そんな頃なのです
薪ストーブまわりの仕事は亡きじいじが担当していたこともあって
煙突掃除はどうする?薪は乾いているのだっけ?
色々なことにいちいち慌てふためいていたら
様子を察してくださったのか 頼りにしている大工さんが
急遽煙突掃除をしてくれて 無事に薪ストーブに火が灯りました
そう、あの極寒日の前の日に

とにかく心が漣だったまま過ぎ去っていった10月でした
気持ちが先走りして
しょうがなく空を眺めてばかりいたような
そんな日々でもいくつか珠玉の日々の記憶を

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晴れ渡った日の山の上
果てしなく空へ歩いていくにつれて
このままどんどん小鳥くらい小さくなっていくような
降り注ぐ陽光がただただ暖かくて

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糸のような三日月の夜のこと

今年はマイスキーが来るのよ、
そう最初に聞いたのは確か夏前くらいのこと
夢みたい!マイスキー!
マイスキー行かないの?
周りに目を輝かせて語ってくれる友人が何人もいたこと
そのおかげだったのだと思う
八ヶ岳高原音楽堂は訪れたことはあっても 演奏会を実際に聴いたことがなかったから
思い切って聴きに行ってみよう、とチケットを購入していました
無伴奏チェロ組曲を演奏してくれるなんて、夢みたい!
そう興奮気味に語ってくれる友人の言葉に
そうなんだ、とほとんど無勉強なまま
つまりまっさらなまま、演奏会に向かったのでした

そして
バッハ無伴奏チェロ組曲特に第六番は本当に素晴らしいものでした
暮れていく空の色、遠景の山々 木々のシルエットを背景に
マイスキーの気迫、吐く息、彼が舞台の床を踵を打ち付ける音
チェロの弦の響きが身体の内側の膜と
心の水面を激しく震わせる、そんな体験でした
演奏会が終わって 外に出るとまだ薄明るい空にうっすらと三日月がありました

周りが闇に沈むにつれて糸のような三日月が 橙色に灯っていく
そんなお月様に見守られて唐松林の道を運転して帰宅したのでした
ただ過ぎ去っていってしまいそうだった10月の日々に
ピン留がされた1日。
あれから毎朝第六番聴いています

”霧。小石が水路に
ぽとんと落ちる。水の声が
夜のしじまに雪渓から湧きあがる

藁袋の上であなたは
わたしのために毛布をひろげ、
そのごつごつとした手で
肩にかけてくれる、そうっと、
寒さで
凍えてしまわないように。

わたしは思いを馳せる、
ゆっくりとした手の動きの
向こうに、あなたのなかで息づく
偉大な謎に、山の
広大無辺な岩場での、言葉を介さない
人間どうしの友情の意味に。
静寂に包まれた、二人のあいだには
霧を越えてひろがる
空全体よりもはるかに
多くの星や秘密や
たどることのできない道があるのかもしれない”

〜アントニア・ポッツィ「登山小屋」
”フォンターネ 山小屋の生活” パオロ・コニェッティ

10月の日々 共に過ごしてくれた自然と友人と 家族とルルに心よりありがとう

Posted in 日々のこと daily note
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