ひとりのじかん drypoint/2012
夏の疲れが出るころに
バッタがひとり
野原をゆく
たったひとつの触覚と
ひとつたりない3本足で
あっちの草へ飛ぼうとせずに
ほんとうに行きたいところへ
心を澄ませて
いいにおいのする草へ
Waltz in autumn drypoint/2012
秋のワルツは
愉しく哀しい想い出ワルツ
カミキリ虫の水玉模様と
彼の見事な飛びっぷり
この秋最後の
僕らの合唱
カタツムリの朝 drypoint/2012
drypoint/2012
心の友は
空からも
海からも
記憶からも
雨のなかでも
いつでも
飛んで駆けつけて
くれる
はず
………..
なみだはにんげんのつくることのできるいちばんちいさな海です
寺山修司