馬と草とクリスチャン

 

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2018/9/14

「明日馬たちと何をしたいか、考えておいて,
僕に言って。そうしたらできることはできるんだから、」

電話でクリスチャンがそう繰り返してた。
翌朝9:30に部屋をノックする音がして
ドアの外に満面の笑みのクリスチャンが迎えに着てくれる
「はい、さtilamisu-、今日は何をしたいか僕にリクエストすること決まった??」
まずは野原にいる馬たちを見てスケッチして
それからトレーニングしてるところを見て見たい
もしもまだ時間があれば馬たちと歩けたらいいなぁ〜と
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貸してくれたのは椅子付きの”絵描きリュック”と、乗馬用のごっついつなぎ
風が吹いても雨が吹き付けてもへっちゃらな。
「じゃね、ok? 僕は指輪を仕上げてるから、君はスケッチタイム」
広い広い野原に馬たちは散らばっていた

歩きながら草を食みながら ぽつんと一人
覚えていてくれたのか、どうかな
何頭かが次々近寄って来て鼻先をこちらに寄せてくる。あら、また来たのね、と。
NaturanとAsukaと、、、Gloaと

 

「午後はNaturanの調教してみよう。」
みんなこっち、おいで、とクリスチャンがあらわれてそういうと、馬たちが納屋の方向へ急に走り出した。

 

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急に強い風が吹いて
クリスチャンのグレイがかった立派な眉毛が 左側だけ上方に勢いよくカールして
似合いすぎるポンチョをまとって大股で馬たちを追って歩く姿も
なんだかゼウスだか アキュロスだか そんな風にみえてしまうくらい
馬と草とクリスチャンの景色
その日のトレーニングはNatturan
みんなから離れて連れ出されることに しばらく足を踏ん張って抵抗していたけど、
「ほら、どうした、今日はいいところをtilamisuに見せてあげよう、」
優しく、でも威厳たっぷりに言い聞かせる。
トレーニング用のリングに入ったクリスチャンとNatturan

そこからは静けさと緊張感と集中している二人だけの世界がはじまって私はリングの外に立ってながめる
クリスチャンの声とむちの持つ手の高さで 馬は動く
“dygtig,,oh dygtig”と一つの動作ごとに 褒める言葉をかけながら
(、、、、dygtig(デュクティ)は褒める時によく使われるデンマーク語cleverとかsmart!というニュアンスかなぁ)
それに応えるNaturanの穏やかな自信に満ちた瞳
心が繋がっているなぁ、見ててなんだか涙目になる
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大事なのは
「とってもよくできた時に、トレーニングを終えること」
あと少し、と思わないで
最高にいい出来をした時によくやったぞーと褒めて
それでその日はもうおしまい。そうするといい記憶といい気持ちだけが残るからね。

こうやって重いサドルを背中に載せることも
60キロの人間の重さを受け止めることも
彼らにはとっても厄介なこと、だからね、ちゃんと説明してあげること
突然横に立つ人間が思いも寄らない動作をすると
馬はとってもおどろくんだ
怖がらなくてもいい、ってことをまず教えてあげること

「とにかく馬のトレーニングはpatientでないと、できないなぁ」

ちょうどそのよいタイミングで雨が降り出して、その日の調教は終わりに。
満足そうなNaturanはしきりに顔を寄せてくる よくやったでしょう、と。

部屋に戻ってからは
さ、今度は僕の水彩、見てみる?と
しばらくクリスチャンの作品を見せてもらう
絵だけでなく、ミニチュアの家具も、本当のベッドも
シルバーの指輪も革細工も、馬の彫刻もなんでも手がける。
「これはおじいちゃんの影響かな、
僕が小さい頃、おじいちゃんと一緒でね、彼はなんでも創る人だったから」
ある日馬に乗る服が欲しい、って言ったらじゃぁ作ろうってことに、なったんだ。
おじいちゃんは洋裁なんかやったこともなかったのに、二人でせっせと
あれこれ頑張って作った。なんでもやれば作れるんだってニヤッと笑ってね。」

 

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