野生の回想

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2020-1-7

雪にならない しとしと雨を聴きながら
描きかけのキノコに筆を入れる
あの日も雨が降っていて
クヌギの林を屈むように歩いて
掌に載せてかえったちんまいキノコたちの
湿った匂い
冬の蒼い実 深紅の実

膝の中の小さな小さな水溜まりは
思いの他動きを妨げることに、なかなか慣れないでいたのだけれど
ああ、立ち止まる時なのかもしれない、という思いもあって
たまりにたまったスケッチブックから
描きなおす
描き加える の日々
動いている時に出会えるものと
立ち止まっている時に出逢うものは
雨と雪くらい、 違うのだ
自分の中を刻々と通り過ぎいく、次の瞬間には消えてしまいそうな景色を
立ち止まることで掬い上げられる、そういうこともある

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あの日の雨粒の染みや苔のしっぽ、
草一本の鉛筆の線、消し痕、干からびた葉っぱから
薄ぼけていた記憶がふわりと立ちのぼる
そんな風に そんなことで
心は どこにでも羽ばたけるのだということ 
そう気づかせてくれるのも
やっぱり草花たちなのだ
この8年通った地で出逢った野生の草花たち
彼らの名前を照合しながら
野生の回想を試みようと思う
それが1月の目標

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