冬の光

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2022/11/30
noirさんの展示会は先日無事に終了いたしました
今年の展示会もこれをもってすべて終了です
足を運んで下さった皆様
遠くから、そしていつも近くで支えてくださる皆様
本当にありがとうございました

手を止めたら
きっと放心していたような気がします
描くことが日々を繋ぎ止め
手を動かすことが支えとなっていました
今年は思いがけず展示会が重なっていて
ただ必死に、一つまた一つ、目の前のことだけに向かっていました
そうできたのは絵を見ていただく機会を作っていただいたこと 
それがあったから
本当に心から感謝しています
そして暖かく見守って頂きありがとうございました
じいじの鳥を連れて
いろんな場所へ旅することができたなぁ、と思い返しています

ようやく
みずうみに向き合える、そんな気がしています
悲しみと一緒に
そのまま浮かべておいたこと
淋しさに包んで沈めておいたもの
ひとつひとつ掬い上げて
どんなものか耳をすませてみる
そういう時期がきてるのだと思う
冬の澄んだ光を味方にしたい

”木枯らしの来る前の関東の日和、それは短いが、神の賜物のような静かな日がある。
はなやかではないが、真実味があり、骨格的であり、根源性がある。
色は渋く、においは寂び、形は裸形で直ちにこちらの内部に入ってくる
朝、霜のかがやきに身はひきしまり、葉を落とした樹木は飾ることなくものをいい、冬の月のひかりは心の底にまで届く。
おのずから極めの月であることにも思いが行く”

篠田桃紅 ”私というひとり 桃紅”

そんなこと思いながら
薪運びしてました
1日が何て短いこと

草野

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風と光と
草と花と
目を閉じてそこに漂うとき

手のひらにちょこんとのるくらいの
ちいさな花に
足首にそっと触れる草に
風に揺れる黄とバイオレットに

ここに在ることを受け止めてもらえる
そう感じてたのだと思う
ここにいていいよと

たぶん
わたしがわたしを受け止められるようになるずっと前から

朝の雫と
夕の風
やがて降り立つ霜
季節が巡ってやがて彼らがまた現れることを
知っている
知っているけどまた出逢う
待ち遠しい
そうやって描きつづけたい

水彩画と版画
二つの技法が別の景色に連れ出してくれる
今回もしみじみそう感じながら制作をしていました。
水彩は生身の、いきとしいけるものに対峙する
静謐さと真剣さが伴う 
描き出したときの高揚感から始まって 
立ち止まり、絵の前に佇む時間が長くなって ふぅ、と
息を止まってたことに気が付く
一つの茎、一つの草を描くのに半日かかったりする
刻々と水と絵の具が流れ動き、どこにたどり着くのかわからない旅のようなもの
遅々として進まないこともある
描かずに絵の前でただ佇んでいたことも そのときの思いも絵に積み重なっていく気がする
一方の版画は指先の動きに身を任せるというような感覚、
一瞬の何かを掴むような
成り行き任せなハラハラ感を伴う
水彩で張り詰めていた気持ちが、版画の作業をしているうちに
ふっと緩む、こともある

そんなわけでここ数年、どちらにも偏ることなく
展示会には水彩画と版画とが並んでいます
9月に訪れたデンマークで版画の作品に出会って
版画で違う世界を描きたいと思う気持ちが生まれてきました
また試行錯誤して行きたい

青い版画

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2022/11/19

 

版画も新作作りました。c - 4

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この花の側にいれば
貴女らしく
空を眺められる
そんな居場所ありますか

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あの葉っぱの側にいれば
少しのあいだ隠してもらえる
紫色の実が
身を寄せ合っていて
貴女もそっと
その一部になってもいい

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月夜

月夜に輝きを増すのは
きみの涙だけではない
凍えそうな足元で
深い蒼に輝く花
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青い箱のシリーズ

Exhibition 秋色の部屋

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2022/11/19

noirさんでの展示会始まります

八ヶ岳から朝霧高原を抜けて
大きな富士山の裾野を越えて
伊豆国市まで搬入へ行ってきました
木曜日のこと。
降り立つともわっと暖かくて
季節が巻き戻されたようでした

展示は本日から 26日まで
わたしは明日20日に在廊致します

noirさんのお庭蔦が色づいて 山茶花が咲いて心地よい風が吹いています
秋色の水彩の部屋、
青い版画の部屋
楽しんでいただけたら嬉しいです
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October

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2022/10/31

10月の一番美しい夕そらは 真冬のように冷え込んだ日のことでした
どこか高い山の頂きから見ているような
荘厳な景色 移りゆく色
この美しさは寒さが授けてくれたのだとしたら、
白い息を吐きながら見上げていました。

薪ストーブをつける季節がこんなに早く訪れるとは!と驚いてみたものの
思い返してみれば10月20日を過ぎれば、そんな頃なのです
薪ストーブまわりの仕事は亡きじいじが担当していたこともあって
煙突掃除はどうする?薪は乾いているのだっけ?
色々なことにいちいち慌てふためいていたら
様子を察してくださったのか 頼りにしている大工さんが
急遽煙突掃除をしてくれて 無事に薪ストーブに火が灯りました
そう、あの極寒日の前の日に

とにかく心が漣だったまま過ぎ去っていった10月でした
気持ちが先走りして
しょうがなく空を眺めてばかりいたような
そんな日々でもいくつか珠玉の日々の記憶を

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晴れ渡った日の山の上
果てしなく空へ歩いていくにつれて
このままどんどん小鳥くらい小さくなっていくような
降り注ぐ陽光がただただ暖かくて

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糸のような三日月の夜のこと

今年はマイスキーが来るのよ、
そう最初に聞いたのは確か夏前くらいのこと
夢みたい!マイスキー!
マイスキー行かないの?
周りに目を輝かせて語ってくれる友人が何人もいたこと
そのおかげだったのだと思う
八ヶ岳高原音楽堂は訪れたことはあっても 演奏会を実際に聴いたことがなかったから
思い切って聴きに行ってみよう、とチケットを購入していました
無伴奏チェロ組曲を演奏してくれるなんて、夢みたい!
そう興奮気味に語ってくれる友人の言葉に
そうなんだ、とほとんど無勉強なまま
つまりまっさらなまま、演奏会に向かったのでした

そして
バッハ無伴奏チェロ組曲特に第六番は本当に素晴らしいものでした
暮れていく空の色、遠景の山々 木々のシルエットを背景に
マイスキーの気迫、吐く息、彼が舞台の床を踵を打ち付ける音
チェロの弦の響きが身体の内側の膜と
心の水面を激しく震わせる、そんな体験でした
演奏会が終わって 外に出るとまだ薄明るい空にうっすらと三日月がありました

周りが闇に沈むにつれて糸のような三日月が 橙色に灯っていく
そんなお月様に見守られて唐松林の道を運転して帰宅したのでした
ただ過ぎ去っていってしまいそうだった10月の日々に
ピン留がされた1日。
あれから毎朝第六番聴いています

”霧。小石が水路に
ぽとんと落ちる。水の声が
夜のしじまに雪渓から湧きあがる

藁袋の上であなたは
わたしのために毛布をひろげ、
そのごつごつとした手で
肩にかけてくれる、そうっと、
寒さで
凍えてしまわないように。

わたしは思いを馳せる、
ゆっくりとした手の動きの
向こうに、あなたのなかで息づく
偉大な謎に、山の
広大無辺な岩場での、言葉を介さない
人間どうしの友情の意味に。
静寂に包まれた、二人のあいだには
霧を越えてひろがる
空全体よりもはるかに
多くの星や秘密や
たどることのできない道があるのかもしれない”

〜アントニア・ポッツィ「登山小屋」
”フォンターネ 山小屋の生活” パオロ・コニェッティ

10月の日々 共に過ごしてくれた自然と友人と 家族とルルに心よりありがとう

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